サラリーマン

クールなサラリーマンてどんなだろう。

仕事でハードな思いをしている。

だからハードな酒を飲まずにいられない。タバコも吸わずにはいられない。

妻子持ち。だが女好きは当然。夕方には朝に剃ったヒゲが生え、スーツもよたり、シャツもよたり、ネクタイもよたる。ダークネイビーかチャコールグレーのストイックなスーツ。遊びはどうがんばっても飲む、打つ、買う、にしか興味が持てない。ジムもアウトドアもくそくらえ。酔えば苦い過去を思い出す。更に飲む。視界がぼやける。

そしてふと家族を思いだす。


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コーラ

ジョニーが生還した。

丸3日間飲まず食わずで漂流したが命からがら何とか生還をしたのだ。

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誰かが水を持ってくる。

「すぐに水を飲まないと!!」

ジョニーはそれを手で払いのけた。

「コ、、、コ、、」

「はい?」

「・・・コーラ、だ。コーラをくれ」

他の誰かがペットボトルを持ってきた。

「これを!」

ジョニーがカッと目を見開いた。立ち上がってひったくり、遠方へブン投げた。

「コーラはビンに決まってるだろうが!100歩譲ってカンだよタコが。うっ、、 ガクッ」

「あああ、ジョニー!!」

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回復したジョニーはしみじみ思う。

コーラこそが20世紀以降に開発された最高の食品だと。

「ステーキにもラーメンにも、寿司にすらマッチするんだ。信じられるかい?」

幼少期に嫌いな苦手な食べ物を出された時、

ひたすらコーラで流し込んでいた事を思い出す。

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ジョニーはコーラを飲み続ける。

「なんだか歯がきしきしするな。歯が溶けているような気がするぞ。」

でも気にせず飲む。

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たまに飲み残して炭酸が完全にきれたコーラを飲んで思う。

「至極ドス黒い着色料にあり得ないレベルの甘さ。何だかヤベエなこれ。」

でも気にせず飲む。

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ジョニーは今日もコーラを飲む。

夜の雨

雨が好きな人ってめったにいないだろう。

俺も雨は嫌いだ。昼間は仕事で外に出なきゃいけない。雨と夜の組み合わせは最悪だ。洗濯物も乾かない。でも1つだけ。雨の夜中に車に乗って街道をあてもなく走る事。これはとても楽しいぜ。雨の日は人通りも少なく静かだ。濡れた窓越しに見える信号機の光はとてもきれい。見えづらい視界の中で交差するヘッドライトもきれいだ。道沿いのコンビニさえも美しく見える。ぼんやり走っているうちにやがて気持ちが落ち着き静かになっていく。すげえcalm down。心が静かになってくると、

そのうちじんわりと心の底から暖かい気持ちが産まれてくる。窓を開けると、雨に打たれた生暖かいアスファルトの匂いが香ってくる。街の体臭だ。ラジオをかけるとDJが俺だけに話しかけてくれているような気になる。

今はただ走るためだけの為に車に乗る事ってなくなってしまったけど、雨の日の夜だけは時々走る。新しい心に会えるから。

また今度雨になったら走ろう。


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New York 1992

あの街はどこへ消えた。

1992年12月31日のニューヨーク。

家族で行った旅行。

初めてのニューヨーク。

鼻孔を突き刺すような冷気。

夜空を突き抜ける摩天楼。

鳴り響き続けるイエローキャブのクラクション。

ブロードウェイのネオン。

ああニューヨーク!

 

大人になってから1人で行ったけど、もうその街はなかった。

何かが消え去っていた。

どこに何が消えたのか。

もう戻ってこないのか。

 

 

この時期になるといつも思いだす。

あのニューヨーク。

You Tubeでなんとなくフランクシナトラをかけてみる。

あの匂いがよみがえりそうになるけど結局消えていく。

 

またあの街に行きたい。

コインランドリー

コインランドリーを見かけると甘酸っぱい気分になる。

 

19歳で初めて上京した頃に通っていたボロッボロのコインランドリー。

今もあるのだろうか。

 

俺にとってコインランドリーは希望の象徴だ。

 

洗剤と柔軟剤の匂いと乾燥機の温度が混じってできあがる独特の空気。

あの空気を吸うとあの頃を思い出す。

 

その気になれば何にでもなれると信じる事ができた19歳の頃。

 

今でも道すがらコインランドリーがあると立ち止まってしまう。

 

カネは無さそうだけど、だけど心に自由と希望をもった奴らが乾燥機に服をぶっこんでいる。

 

つい俺も中に入る。

 

あれから20年近くが経った。うまくいっている事もあるけれど、あきらめた事はその3倍かな。

 

けれどコインランドリーが、19歳の俺が、俺に語りかけてくる。

 

「命さえあれば、夢なんてまたいくらでもつくれるぜ」 と。

 

コインランドリーの空気をまた目一杯吸い込んでから外に出る。

 

「バカヤロウ。 まだ始まっちゃいねえよ。」 キッズリターンを真似してつぶやいてみる。

 

心にThe Clashの“Death or Grory”が流れている。

 

今日もがんばろう。


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横浜黄金町の記憶

かつてこの街に売春宿が密集している路地があった。

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俺は友人に連れられて、

初めてあの路地を歩いた時の事を今でも忘れられない。

幅はわずか3メートルにも満たないくらいだろうか。

路地の両側にスナック型の売春宿がびっしりと並び、ピンクとも紫ともつかない妖しいネオンが淡い光と湿度を放ち、路地を包み込んでいる。

妖しい光の中で娼婦の笑顔がボワワワ~ンと浮かんで揺れている。日本人ではない。南米なのか東南アジアなのか。多国籍というより未国籍。

当時は19歳で女を全く知らなかったジョニー。緊張と恐怖で何とか横目で見るのが精一杯だった。嘲るような笑いと誘惑の舌打ちの音だけが海月のように流れていく。歩いていた時間は5分程度だったかもしれない。ふと我にかえった俺は、友人を促し路地を後にした。怖気づいた訳ではない。自分の中で生まれた衝撃と感情を色褪せたくなかったのだ。

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あの土地特有の磁力、陰の歴史を持つであろう建物の磁力、どこから来たのかもどこへ行くのかもわからない国籍不明の娼婦、路地沿いを流れる汚い川、それらの全てが溶け合い幻影を生み出していた。あんなにもネオンの光が歪んでいたのを俺はかつて見たことがない。ボワワワ~ン。

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今はもうない。


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ブコウスキーにはなれない

学生時代にチャールズブコウスキーに憧れていた。今は亡きアメリカの作家だ。

 

ワイルドだけど知的な風貌、ワイルドだけど繊細な描写。

世間に認められるまでは日雇い労働や郵便局での仕事で生活費を稼ぎながら小説や詩を書いていた。

小説の主人公の生き方、ハードな労働、酒をがぶ飲みし、女を抱き、詩を書きためる。 そんな生き方に心底憧れを抱いた。

なぜか俺が特にかっこいいと感じていたのは常にハードな労働で生活を支えていた部分。

仕事ってよりは労働って言葉の方が合う。食い扶持を稼ぐ為だけの単調でハードな労働。

彼の小説には労働や喧嘩の描写が多い。肉体的な生の力に溢れている。スポーティーな意味での肉体では無い。ジムでの筋トレや高機能スポーツウェアじゃ決してつくる事のできないパワー。根源的な生のパワー。そしてその労働というベースが、彼の書く全ての文章にリアリティを持たせている。俺はそう感じていた。この労働の部分がホワイトカラーなデスクワークやオシャレ感のある仕事だったとしたら好きになっていなかっただろう。

彼の生き様に憧れるあまり、ブコウスキー感を出したいあまり、大学時代には肉体労働系のバイトをやってみた。すぐに「なんか違う」と思った。というか全然違う。典型的なアッパーミドル家庭育ち、ルックスはどちらかというとかわいい系、しかも学費を親に払ってもらっているぬるい大学生だった俺がポッと労働してみたところで当たり前のように何のリアリティも生まれない。

 

ブコウスキー感は諦め、社会人(サラリーマン)になってからはトム ウェイツ感を出したいと思った。 “The Heart of the Saturday Night”のアルバにジャケットにうつる男のくたびれた雰囲気に憧れたのだ。ネクタイしているし。これなら、、と思った。このウェイツ感を出す為に毎週末は歓楽街で酒を飲んだ。しかし話すまでもなくトム・ウェイツ感も全く出せない。気が付けば憧れた哀愁やくたびれ感とは真逆、EDMが鳴り響く店で泥酔して女のケツを全力で追いかけているだけだった。

 

さすがに俺でも気が付いた。ブコウスキーが輝くのは肉体労働をしているからなんじゃない。詩という情熱の全てをぶつけられるものを持っているからだ。トムウェイツが輝くのは全身全霊で音楽を創っているからだ。熱い魂をぶつける対象があり、初めてその背景が輝くストーリーになる。

 

ブコウスキーにはなれない。トムウェイツにもなれない。アクセルローズにもなれなければ、当然松田優作さんにも萩原健一さんにもなれない。 誰にもなれない。

 

お前はお前にしかなれない。

本物のお前になる為に、死ぬまでに何としてでも情熱を燃やせるものを見つけなきゃいけない。

 

 

、、、未だ何も見つかってないけど今は“恋する惑星”のトニーレオン感を狙っている、、、


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